2018年5月18日金曜日

【雑記】メタゲームと環境変遷 -環境を進める行為とは-

シーズン9を振り返って

シーズン9の結果を回収していたら、やはり前シーズンで話題性が高かったのは「みがわりバトングライオンを中心とした局所的なメタゲーム」だったように思います。

以下参考
最終2173 結論asamiループ

本来のテンプレグライオンは地震/ギロチンor毒/守るor羽/身代わりであるため、身代わりボーマンダのような地震が効かないポケモンの身代わりを壊すことが出来ないため、グライオンを見れば大方のプレイヤーは身代わりボーマンダで対応していました。実際、前シーズンまではそれで解決できていたため身代わりバトングライオンは、当初ノーマークだったからこそレートが躍進し、マッチングした他のプレイヤー達も影響を受けて同様の型を使いだし、一時的に環境トップメタ状態になったと考えられます。

新型グライオン躍進のメカニズムにせまる

では、何故身代わりバトングライオンが強いのか、簡単に説明してみましょう。

・テンプレ(選出画面で大多数のプレイヤーが想定していた型)
グライオン@毒々玉 ポイヒ HD,HS,AS
地震/ギロチンor毒/守るor羽休め/身代わり
・上記のテンプレは先述のように「地震で割れない身代わりが使えるポケモン」に圧倒的不利を取る。
・例:ボーマンダ、テッカグヤ、グライオン、ジャローダ等
・以上のポケモンはグライオンに後出しから処理可能として繰り出されることが多い
・以下、シミュレート
①グライオンの起点になる自陣のポケモン(ギルガルド等)が交代する:相手グライオンが身代わり
②繰り出されたポケモンが相手グライオンを起点にするため身代わりを使う:相手グライオンは身代わりを残したままバトンタッチで高速ATへ繋ぐ
・グライオン側が身代わりを残したまま繋いだ高速ATがフェローチェやカプ・コケコ、メガゲンガー、ゲッコウガ、アーゴヨン等であった場合、グライオンに身代わりが残せるポケモンよりも速いので打ち合いで勝ち残り、大きなアドバンテージを得る。

前シーズン末期ではまさにこんな局面が多発していたはずです。

このグライオンはミラー対面でも同じ動きができるため、最終的にバトン先のSが高い方が有利であったと結論がでてきます。
そう、このため最速襷フェローチェが採用されていたと考えて問題ないでしょう。

テンプレ型の数とメタの鋭さの関連性

このように、「テンプレ型しかいない」との前提条件が成立するポケモンは、「テンプレ型だけへのメタで構築が完成する」との認識を受けやすいようです。
そのため今回のような「テンプレ型だけをメタった相手を強烈にメタる」戦術が生まれます。このような戦術は一度シーズンが明けた後に誰かしらから否応なく公表され、新しいテンプレ型として認知され、テンプレ型全体の解決方法が研究されて次の環境に移行していきます。今シーズンからはグライオンにボーマンダを投げる人は減るでしょうし、グライオンに最速フェローチェを投げたり、挑発身代わりグライオンや挑発身代わりジャローダなども使用されるかもしれません。

では仮にテンプレ型以外に考え得る限り全ての型に対応したメタというものはあり得るのでしょうか。
実は、その完全対応メタに値するポケモンこそが、一般的に「流し」と呼ばれる役割を持つポケモンと言えます。

今回のグライオンに関して言えば、「流し」とは氷柱針が使えるマンムーやパルシェン、一貫した音技が使えるアシレーヌなどです。
この辺りのポケモンは「流し」性能が露骨に高いため、一般的には行動回数(何回流しとして場に出せるか)を上げるために耐久を高めるか、役割遂行力(流れた先を倒す性能)を上げるため火力を高めるかのどちらかの調整が採られることが多くなります。

環境変遷の意味とプレイヤーの目的

以上のように前回流行った戦術に対する解決策がこの記事等で紹介されたとしましょう。現段階で紹介された解決策がこの後の環境で流行するでしょうか?
僕はそうは思いません。ここで挙げたような解決法や、別の解決法があったとしても、それを「公言してしまった」段階で、環境を進めた以上の成果は何も得られません。

対戦ゲームで一つの課題に対する解決法を、ある程度影響力を持ったプレイヤーが提示したとして、そのプレイヤーは自分がアイディアを秘匿して実績に結びつける手段を放棄してまで、解決法を公開したメリットは「環境を進めた事自体への称賛」を得る以外には無いはずです。

しかし、現在のポケモンプレイヤー達の最終目的は「レート実績を得る」ことではなく、「レート実績を使った名声と称賛を得る」ことと「レート実績よって達成感を得る」ことと言えるため、手っ取り早く周囲から称賛を得られるならば、情報の秘匿はなかなか発生せず、殆どのアイディアはSNSやDiscord、Skypeなどで自然に流出していきます。

これは特にシングル界隈でよく起こることで、WCSのような非常に大きな大会があるダブル界隈ではあまりこういった情報の意図的な流出は見られません。

シングル界隈では、この意図的な情報の拡散を「環境を進める」と言った意味で肯定的に受け取られているところがあります。
では、環境を進めることは、最終的に何をもたらすのでしょうか。環境を進めた先に、完全な環境の停滞は起こるのでしょうか。
少なくとも、環境が進む毎に変遷速度は減速していくことは間違いありません。つまり、環境は進めば進むほど代わり映えしない状態になっていきます。

そして、ポケモン対戦は環境を進めることが目的のゲームではありません。基本的には皆が皆「勝率の最大化」を追い求めて取り組んでいるはずです。(負け続けて負の感情が湧くのであれば、逆説的に勝率の最大化を狙っていたと言えるため。)そうした中で僕は、進みきって停滞した環境で最も適したプレイヤーほど、環境を進めたがらない傾向があり、逆に環境を進めたがるプレイヤーほど、環境末期で実力を発揮しづらくなる傾向があると考えています。

つまり、環境を進めてもそれを称賛する人がいなければ誰も得しないのです。

情報の価値とプレイヤーの戦略

今後ポケモンプレイヤー全体で情報の価値と知財意識が向上しない限り、コミュニティを隔てた内部情報リークや対戦相手からの情報流出等で開拓重視のプレイヤーは非常に不利な状況に追いやられるのが一つの定説となり、ソロプレイの開拓派プレイヤーは数を減らすでしょう。
今後、開拓は様々なプレイヤー同士のコミュニティ単位で進むものとなり、より集団的な活動が増えると予想します。

ポケモン対戦でのプレイヤー戦略は、ゲーム内だけの過程や結果だけで説明がつきません。
必ず、プレイヤーそれぞれの目的に沿ってSNS等を介したコミュニティでの活動が伴った、複雑な思惑によってダイナミクスを形成していると考えられます。

以上より、ポケモン対戦でゲーム理論が完全には通用しない一つの理由が示されました。

今後はこのようなダイナミクス要因を含めてもゲーム理論によってどこまでの成果が得られるか考察を深めていきたいと思います。

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