そのTwitterでの議論テーマは「対面構築の定義と名称」でしたが、私はその議論を拡張し、過去の環境分析などの記事で取り上げたテーマを踏まえた上で話を進めることにします。
最初に、今から議論するテーマ自体の意義について考えます。
これから扱うテーマはポケモンの対戦ルールシングル63での「PT構築の分類」であり、PTを構築と呼ぶ以上PTのコンセプトとそれぞれのポケモンの採用理由や型、仮想敵への対策、その対策を切る理由などが明確に説明できなければなりません。そうした事前の準備段階での理論に沿って組まれたPTが構築であるとします。
そのPT構築の種類は当然ポケモンの組み合わせや型の数だけ存在することになり、昨今の対戦環境ではPT構築群の分類が自然と生まれ、その名称が氾濫しておりその定義も個々人の解釈によって異なっているのが現状です。そうした中で現在は、PT構築群の分類を体系的にまとめて定義を明確にし個々人の解釈に齟齬が生まれることを防ごうとする動きがあります。しかし、そこで問題が生じます。PT構築の分類で名称を定義することは、その名称の由来となった各個人の権威付けに繋がり、所謂「起源主張」と揶揄されて論争が絶えず分類が進展しないことがこれまでの流れでした。
そこで私は分類上の名称は1つに定める必要は無いと考えました。つまり、各個人が同じPT構築を想起出来る共通認識の方を取り扱えば名称が複数あるとしても意味が同等であるなら対戦考察での会話に齟齬は生まれにくいでしょう。(ここで名称とその意味を意図的に乱立させる荒らし行為についての問題は論外とします。)
また、しばしば取り上げられる議論テーマとして「PT構築の分類に意義はあるのか」というものがあります。それは「PT構築がそもそも分類出来るものであるのか」という問いと「分類が必要であるのか」という問いがあり、前者については各プレーヤー達が同じPTまたはそれに似たPTを使うという状況がであるため共通認識が自然と生まれ、分類が出来ます。後者については各プレーヤー同士の会話を円滑にするためという回答と響さんの言葉をお借りし、
響@Σ,,゜◇゜,,<@hibiki_mikage 3:25 「理解する」ということは,分類できて,名前をつけることができて,予測することができる ということである。とあるように、PT構築群の分類は各プレーヤーの理解を助け、そのPT構築に対してメタ張る際に思考をよりコンパクトでスマート にします。つまりポケモン対戦に限った話ではなく、物事を体系的に分類することはそれを理解して応用するために必要なことでもあります。
そのため、PT構築群の分類は対戦考察をするプレーヤー達とは切り離せないものであることが分かります。
上記の事項を踏まえた上で、実際にPT構築群を分類しみましょう。
まず初めに、私は役割理論を前提とした上で数あるPT群を勝ち筋のコンセプト別に分類することにしました。
『受けループ』
BW期から、進化の輝石ラッキーとポイズンヒールグライオン、ゴツゴツメットエアームドの存在で「潰し」を放棄して「受け」と「流し」のみの数値的ロジックのサイクルのみで勝ち筋を得るコンセプトのPTが広く使われるようになりました。そのPT構築群は広く『受けループ』と呼ばれています。この受けループの存在が後々に剣の舞などの積み技やキノコの胞子など状態異常を幅広く採用したダメージ数値外での「潰し」と1:1交換以上のアドバンテージを得る「崩し」主体のPTが数多く生まれた切っ掛けになったと私は考えています。
そして、『受けループ』の定義を上記の「潰し」を放棄して「受け」と「流し」のみの数値的ロジックのサイクルのみで勝ち筋を得るコンセプトのPTとします。
この定義の方法は、ポケモンの種族を指定せずにPTのコンセプトのみで定義する方法であり、くーるじーさんや響さんの言葉をお借りすれば『広義的な受けループ』と言えるのではないでしょうか。
そしてこの定義通りにPT構築を組むと自然に上記の3体が入ります。そして残りの3体に全て自己回復ソースを採用した場合は@コさんなどが提唱する『純正受けループ』となります。しかし、実際は受けループを崩す手段も確立されており残りの3体を、相手の崩しに対するメタに回したりグライオンを抜いた受けループも存在します。よって、この段階で受けループの分類を行うと下記のようになるのではないでしょうか。
受けループ
└─「潰し」を放棄して「受け」と「流し」のみで勝ち筋を得る ── 広義的な受けループ
└─ラッキーグライオンエアームド構成を採用 ──────── 狭義的な受けループ
└─PT構成体全てに自己回復ソースを付与 ─────── 純正受けループ
受けループの定義には諸説あり、明確な定義と詳細な分類についての議論は読者に任せることにします。
上記の受けループ分類のように、分類を行うときに私はポケモンの構成を指定せずに、まずPTコンセプトの分類から始めています。そのときには「広義的な」という言葉を使いポケモンの構成を指定した「狭義的な」カテゴリと区別します。
こういった方法で現行環境でメジャーなPT構築群を分類してみましょう。
今のPT構築群を分類すると、ⅰ上記の受けループ、ⅱ積みや状態異常などのロジックで崩しを主体とするPT群、ⅲ潰しを行い役割理論的なダメージレースで勝ち筋を得るPT群の大きく3つのカテゴリに分類できるのではないでしょうか。
そして、私は仮設的にⅱとⅲにそれぞれ「崩しロジック」、「スタンダード」と名称を付けておきます。『スタンダード』という言葉を選んだ理由は役割理論的なサイクル戦がポケモン対戦の黎明期から始まった最も基本的なプレイスタイルであると考えたからです。(もちろん、仮設的に与えた名称であるため後の議論で変わっても意味が同じであるなら問題はありません。)
実際にはⅰ以外のPT構築群はⅱとⅲの要素が混ざり合ったPT構築になるでしょう。その場合は次に示す通りポケモンの構成を指定して分類していきます。
『天候軸』
上のアイコンの5体は特性でそれぞれ天候を変えることが出来、その天候とのシナジーを活かしたPT構築群が大きなカテゴリとして存在します。有名なものでは、カバドリ、バンガブ、バンドリ、ニョログドラ、キョウクレ、ユキトドなどが挙げられます。その中でカバドリを例に分類してみましょう。
『カバドリ』
BW初期に対戦環境を席巻したPT構築群です。現在カバドリ構築の基本となっている構成はカバルドン、ドリュウズ、ラティオス、ハッサム、ナットレイ、ウルガモス、キノガッサ、カイリュー、スイクン、ブルンゲルの中からカバルドンとドリュウズを確定して残り4体を選択した形になります。それはカバルドンで砂天候を取り、ドリュウズのSを上げつつステルスロックやゴツゴツメットで定数ダメージを稼ぎながら欠伸でドリュウズの積みの起点を作ってドリュウズで崩すというプレイスタイルが一般的です。
よってこのPT構築群は「崩しロジック」に分類される訳ですが、一般的な構成ではラティオスとハッサムのサイクルでダメージレース行う要素も含まれているためⅱとⅲの混合カテゴリと分類出来ます。しかし、このPTにラッキーを採用した場合はカバルドンの回復も伴ってⅰの立ち回りが可能になります。そのため、カバドリだけでもⅰとⅱとⅲ全てに分類されるPT構築が存在することになります。
そういった理由から、ポケモンの構成を指定した分類ではそれぞれのポケモンの構成だけで分類するだけでは不十分であり、PT構築の詳細を多角的に検討しながら分類する必要があるのではないでしょうか。
そして、その構成に囚われない分類が必要となった切っ掛けとして、対面構築の変遷があります。
『対面構築』
BW後期から環境のトップメタとなったPT構築群です。
その強さは環境分析Ⅱで説明した通り、シングル63対戦の崩しロジックの基礎であり積みサイクル(最近は積みリレーという名称でも呼ばれています。)の崩し要素やスタンダードの構成も採用することで机上論上では第五世代のグッドスタッフと呼ぶに相応しいほどの強さを誇ります。
しかし、そのプレイスタイルは過去と現在では異なっています。BW後期に流行ったボルトチェンジと蜻蛉返りでダメージを与えつつ、常に有利対面を作りながらサイクル戦で勝ち筋を得るスタンダード的な対面構築と現在のBW2期にメジャーとなったボルトロスなどの個々の対面性能を活かしながら1:1交換以上のアドバンテージを狙う積みサイクル的崩しから勝ち筋を得る対面構築の違いです。
先日のTwitterでは、エースさん、くーるじーさん、響さんそれぞれの意見で対面構築をどう分類するかが議論されました。(私のTwitterのお気に入りにまとめてあります。)
私は対面構築が初期だとエースさんのようにボルトチェンジと蜻蛉返りでサイクルを回すという定義で説明出来るのに対し、今の対面構築を構成だけで呼ぶと一種の「偽装積みサイクル」という呼び方をしなければなりません。
そこで私はどちらも純正の対面構築であると認識した上で、それぞれに接頭語をつける分類を提示します。つまり、先述の大局的なカテゴリを使って『スタンダード対面構築』と『崩しロジック対面構築』と分岐させる案です。
以上から、シングル63対戦のPT構築群分類ではポケモン構成だけで分類すると「偽装」という言葉を使う必要が出てきます。そして意図的に偽装したPT構築との違いで更に問題を複雑化させるためプレイスタイルからのPTコンセプト主体のラベルとポケモン構成での定義ラベルとを別々に用意すれば、よりPT構築の理解が捗ると考えられます。
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