こういった一種の対人ゲームにおいて、「環境」という言葉の使用に疑問視する人達がいます。
実際、そういった人達の主張は筋が通っていて、例えば現在のポケモンのシングル63というルールでは
究極的には「メタの循環が起りえない」ことを知っているからでもあります。
しかしそれはPT構築の優位性をピラミッド型でのみ解釈しただけの机上論に頼った見方であり
実践的にはPT構築の多様性とメタの必要性が「ポケモンが好きな人」と、まだ発掘されていない
アイディアなどによって保たれているのが現状です。
ところが、度重なるバージョンアップによって過度なパワーゲーム化が進み、PTや個体の優位性が
より鮮明になってきており、プールの拡張が無ければ格付けも大きく変動することはありません。
そういった縦割り社会的なPT優位性の究極を見れば「環境」と呼ぶことを疑問視する人の主張は
およそ理解できるものでしょう。
しかし、そうしたPTの優位性も十分理解していると更に新しいアイディアの発掘があったりメタ構築で
ピラミッドそのものが変わるかも知れません。
そこで一先ず私は循環するにせよしないにせよ「環境」という言葉を使い、記載を進めます。
長い前置きになりましたが、これから現在のポケモンシングル63バトルの環境を分析していきましょう。
シングル63が1対1のターン制ゲームである限り、ロジック上の最上級個体は出現します。
それが、現在は下記の2匹になります。
キノガッサとボルトロス(化身)です。
この2匹の対策を怠れば直接勝敗に関わるアドバンテージを必ずと言っていいほど取られてしまいます。
そして、それのポテンシャルを引き出すことを目的としたPT構築が対面構築と呼ばれるものです。
2010末期から2011後期まで環境のピラミッド階層の最上位にいたPTカバドリの対策を施す上で、POで
効率の良いシミュレーションが出来たこともあり、2011年夏頃から少しずつ現在の対面構築が
形成されて行きました。
そして現在の対面構築の一般形は次のようになっています。
Ⅰ.対面構築
ボルトロス キノガッサ ハッサム スイクン マンムー カイリュー
これは1匹1匹のカードパワーが強い個体のみで形成された、ロジック上のグッドスタッフと言えます。
第4世代末期に高種族値のみで固めたグッドスタッフがピラミッド階層の最上位に位置したことと
対照的に思えますが、第5世代のシングル63は役割理論などのロジックが確立されているのを前提として
いるため、残る不確定要素の確率論までも優位に動かせるこのようなPT構築に行き着くわけです。
ボルトガッサという並びは、偶然マンムーやパルシェンが持っている技の氷柱針に弱いため
マンムー1匹で対策とすることも可能です。
よって、このボルトガッサが環境の最上位に位置する限り、マンムーの需要は消えません。
また、前回の記事の「高威力の流星群を撃てる竜タイプ」+「相手の竜タイプを受けて流せる鋼タイプ」
の縦の並び、DSSがサイクル戦の基本的な構築になっています。
このDSSを主軸としたPT構築は第4世代的な高種族値で固めて細かいチューニングを施したスタンダードPT
になることが多いでしょう。
そして、その第4世代的なサイクル戦を第5世代で実現するためにボルトガッサの明確なメタを入れたPTが
ドリュウズ主軸の砂パです。
ドリュウズは「ボルトロスを落とせる電気タイプ無効の存在」であり、「キノガッサの催眠メタ」となり下記のようなPTにメタを含ませ第4世代的な役割理論が支配するゲームに持ち込みます。
Ⅱ.ドリュウズ主軸砂パ
カバルドンorバンギラス ドリュウズ ラティオス ハッサム スイクン +1
そして、ドリュウズ主軸砂パと同じように天候によるS上昇の高打点を利用したPTにキングドラ主軸雨パがあります。
Ⅲ.キングドラ主軸雨パ
ニョロトノ キングドラ ランドロス(霊獣) ソーナンス キノガッサ +1
これはボルトガッサをメタる砂パに強い性質があるため、対面構築とドリュウズ主軸砂パとキングドラ主軸雨パの
3つのPTが基本となって環境が循環しているようにも感じられます。
現に、対面構築の全盛期は終わりを告げ、数ヶ月前のドリュウズ主軸砂パの再生、そしてごく最近の
キングドラ主軸雨パによるオフ会の好戦績が環境の循環を裏付けているのではないでしょうか。
最近のニョロトノは専ら脱出ボタンを使ったキングドラやキノガッサなどの高速展開を図る型が多く
滅びの歌を入れてループ構造もメタれるようになっています。
そして、その雨構成との補完に優れるスカーフランドロスやソーナンス、キノガッサを入れたPTがオフ会で上位に入賞しました。
また、元々ボルトガッサをメタる砂パに対して相性が良いため、対面構築と雨パが組み合わさったり後述の電磁波ガブ展開
の偽装雨パも勢力を増してきたように感じます。
砂パや雨パに対して相性が悪いにもかかわらず周りとの相性補完が優れ受け主体のPTとして勢力を上げた
クレセリア主軸晴パがあります。
Ⅳ.クレセリア主軸晴パ
キュウコン クレセリア ランドロス(霊獣) +3
最初に陽の目を見た晴パは、クレセリア主軸晴パの原型であるUK構築やドレディア主軸晴パなどが上がります。
今では基本的に受けループ系PTと組み合わせるのに相性が良いためクレセリア+ラッキーも数を増やしました。
キュウコン+クレセリア+ランドロスが基本選出となるようです。
砂パと雨パが天候によるS上昇を利用しているためそれをメタるトリパも流行りました。
Ⅴ.ローブシン主軸トリパ
クレセリアorポリゴン2 ローブシン ハッサム カイリュー ヒードランorバンギラスetc +1
ローブシン主軸であり、クレセリアでトリックルーム展開と三日月の舞でローブシンの延命を図る
月光乱舞と呼ばれるPTがトリパの筆頭でしょう。
あとはポリゴン2などでトリックルーム展開を図り周りをカイリューなどバランスの良い構成で固めた
トリパのグッドスタッフのようなPTもオフ会で好成績を収めました。
トリパの弱点である5ターンや天候パの猛攻を耐えぬくため、トリパの行動ターンを凌ぐ8ターン有効な
リフレクターとひかりのかべを使った積みPTがあります。
Ⅵ.ローブシン(キノガッサ)主軸壁パ
ライコウorラティオスorアグノム+サクラビス
ローブシンorキノガッサ カイリューorウルガモス ボルトロス(霊獣) +1,2
壁が有効な間にビルドアップを積み、ドレインパンチによって急所に当たらない限り1匹で受けと潰しを両立できるようにさせるのが目的でこれもローブシン主軸であることが多いでしょう。
また、キノガッサのメタであるHBゴツメ寝言ハッサムを突破するためにビルドガッサが流行ってきています。
そのガッサをフォローするために壁を張る構成も目にします。
2011年初期からあるアグノムで壁を張りサクラビスで殻を破ってバトンタッチするPTもテクニシャンのキノガッサや
霊獣ボルトロスの追加で未だ健在です。
そして、第5世代になってからサイクル戦の究極を追求した受けループも今尚勢力は衰えません。
Ⅶ.受けループ
ラッキー エアームド
グライオンorクレセリアorボーマンダorフシギバナ
バンギラス+スイクンetc +1,2
対面構築が流行る前まではグライオンが必須でありましたが、最近はその配置がキノガッサ対策に
変わっているように感じます。
受けループもオフ会などで好成績を収めているPTであり、根強い人気と熱心に研究されるプレイヤーの存在から
ある意味、現在最も発達した構築群ではないかと考えます。
受けループなどのバンギラスを使用するPTに付加される要素として砂隠れガブリアスを使用した電磁波砂構成は
現在も安定した戦績を残しています。
しかしながら、勝率は安定するもののトーナメント形式でのオフ会などではなかなか好戦績を残すことが出来ないPTでもあります。
Ⅷ.電磁波(砂)
(バンギラス) ガブリアス ボルトロス キノガッサ ハッサム +2,3
最近はバンギラスを抜いて砂パ以外のPTに砂パのメタ要素として電磁波砂構成を投入したPTが数多く見られます。
その構成はボルトロスとキノガッサとハッサムが多く入るため、実は対策構築の亜種であると考えています。
シングル63のWi-Fiランドロスマッチレーティングバトルで安定した高レートを量産した霰パはスタンダード形式の
PTのなかで、他の全天候に対して強いメタが効くために幅広いPTを意識するなら霰パになるという結論は
今でも通用するでしょう。
Ⅸ.霰パ
ユキノオー ガブリアス サンダー
メタグロスorローブシンorスイクン
ウルガモス ソーナンス
霰パの基本構成となったノオーガブサンダーやカバドリ全盛期以前に最も勢力を広げたノオーウルガナンス構成は
現在でも散見されます。
最後に、積み技から攻撃の連続で相手の受けを一気に崩し選出全体を突破する積みサイクルも
厳密にはサイクル戦の考え方から生まれたPTであると考えられます。
Ⅹ.積みサイクル
パルシェン ウルガモス カイリュー キノガッサ ハッサム +1
このPTはサイクル戦を想定したPTつまりスタンダード的なPTの盲点になることが多く、最近でもこのPTは
好戦績を残すことが出来るでしょう。
構成としてパルシェンを基軸に展開し、パルシェンとの潰しの相性補完を広げてウルガモス、カイリュー、キノガッサ、ハッサムとなります。
以上のような組み合わせを各々複合されたPTもたくさん存在します。
最近流行りのPT構築の傾向としては、まず対面構築とドリュウズ主軸、キングドラ主軸に
耐性があるPTが殆どです。
そして不確定要素である確率論を様々なアプローチから制御しようとする流れも垣間見えます。
今回はシングル63の環境を大きな視点から分析しましたが、次回は個別考察も加えて細かく分析しようかと思います。
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