2017年12月21日木曜日

【雑記】シングルレート環境の"見えざる手"

ポケモンのシングルレートにおいて、出来る限り順位を上げるため、日々熾烈な競争の果にレートを積み上げるポケモンプレイヤー達。
ランダムマッチレーティングバトルのサービスが開始された2011年頃の第5世代BW期からというもの、現在の2017年が終わろうとしている第7世代USUM期まで、様々な戦略、戦術が研究されてきた。
その中で読者達は、「既存にないポケモン単体の型の新案を開発する」という戦略的解決手段をパーティ構築時で採った経験はないだろうか。
実際筆者自身も、環境メタを目的とした上で汎用性を重視した直接的な解決手段として過去に何度も「新型のポケモンを開発」してきた。しかしながらその開発(開拓と呼ぶ人もいる)を行うには、それまでに膨大な時間を費やした環境分析と対戦経験の蓄積、そして何より閃きが必要であった。幸い筆者には、その閃きが起こりやすいという意味でのセンスが備わっていたようで、残りの要件を満たせば自ずと新型の提案は幾らでも可能となるにまで至った。
ところが、近頃他のプレイヤー達の提案も含めて、新型の本質的な特徴、性質、開発手法、実践効率までを考察するようになってからは、新型の開発は一つの戦略的手段でしかなく、むしろそれが必要とされるパーティ構築は実践効率が非常に悪かったということを認めざるを得ないと考えるようになった。

新型の開発を含めてのパーティ構築はとても楽しいものである。頭脳のクリエイティブな領域を使用するため、その時のプレイヤー達は謂わばアーティストの感覚で芸術作品を創作するのと似たような高揚感を感じているはずだ。

しかし、ポケモン対戦はゲームである。つまり対戦相手が存在し、多数のライバル達との競争を勝ち抜くことこそが、ポケモン対戦の真髄である。そのため、芸術だけでは理想主義に囚われ行き詰まりやすい。実際、筆者に近いプレイヤーもその理想主義に囚われていることに気付かず、次第にゲームで勝つための考察から離れていったことがある。
それでは、ゲームで勝つための考察とは何か。それは考察にかけた時間も含めて、最低限の準備時間で最大限の成果を得る為に、全てのバランスを意識した上で、目標(レートであれば最終1位や2200など)を達成するのに最もベストな計画を練ることであると考えている。
もちろんその中で新型の開発が無理なく可能であるならば強力な手段であることには変わらないが、基本的には労力に見合った成果は得られにくい。
というのも、汎用性が高くその当時の環境を進める程の新型の提案とは、環境メタであると同時に、それを含めての単体性能の最大化であると考えている。例えば、筆者が過去に開発した第6世代での203ガルーラやオボンHB悪巧み化身ボルトロスなどは、当時の環境に対して強烈な刺さり方をしていただけでなく、その公表後長らく"強い型"として様々な構築に採用された。謂わば"強い構築パーツ"として便利に機能していたわけである。そしてそのガルーラやボルトロスなどが、バシャーモのバトンタッチからの展開も含めると戦術に更なる幅が効き、そういった単体性能が他と一線を画す"強い構築パーツ"を組み合わせた並び、つまりは"強い構築パッケージ"を更に繋ぎ合わせて第6世代厨パが完成した経緯がある。
そうした"強い構築パーツ"や"強い構築パッケージ"を体系化していくと、強い構築が格段に作りやすくなる。
要素を出来る限りパッケージ化することで、構築が簡単になりパッケージ同士のパズルだけで構築が組めるようになったため、様々な構築を検討するスピードが上がった。

しかし、第6世代のシーズン12辺りを境にその手法は効力を失っていった。

パッケージ構築法から生まれた第6世代厨パとそれを好んで使用していた筆者周辺の過ち、それはつまり全てのポケモンが"強いパーツ"であり、"強いパーツのみの集合体"こそが唯一無二の最強構築であるとする理想主義に囚われていた結果、当時のクレセリアのような隙が多く比較的単体性能が良くないサポート特化のポケモン、型に対しての柔軟な考察が遅れたことにあると考えている。
つまり、アグレッシブな戦略ばかりに固執してしまっていたとも捉えられる。
それは第6世代レートの各シーズン結果より明らかであった。
上位の構築の殆どがクレセリアもしくはカバルドンのゴツゴツメット持ちで安定回復型の物理クッションを採用しており、厨パのようなスイクンのみでのクッションでは、メガシンカによって火力が上がった環境においてプレイが非常にシビアとならざるを得なかった。

アグレッシブな戦略は、選択肢の限定と言う意味で諸刃の剣である。
アグレッシブな戦略に対し攻守バランスの良い戦略では、序盤を撹乱してでも凌げば後はリソース勝負で決着が付く。
つまりアグレッシブな戦略には、戦略面でメタが張りやすい。

その事例は第7世代になってから更に、顕著に現れている。
当初はカプ系統のフィールドやZワザの火力などから火力インフレが予想され、コントロール戦略は淘汰されるであろうとの意見が拡がった。
しかしながら、今思えばその予想は浅はかであったと反省せざるを得ない。
筆者は第6世代後期に高耐久クッション入りのバランス型構築が最終的に覇権した事例と、カプ系統のフィールド、Zワザのいずれもターンを稼いで凌げば残りは、リソース勝負で決着が付きやすいとする戦略を軽視していた。
実際、第7世代SM中期から後期にかけては、極めて保守的なサイクル構築が多く上位に上がったことからも窺い知れる。

しかし、第7世代はそれだけではまだ終わらなかった。
SM期最終シーズンの結果は、各ポケモンを対面性能に寄せた構築の躍進によって終わったのである。
つまり、保守的なサイクル構築が増えた結果、試合展開が長引き終盤でプレイがシビアになったために勝率が伸び悩んだのであろう。

その事例から、ポケモンの単体考察によって環境を進めるといったスタンスが低次元に成り下がったことは明白である。
それはもはや一つの選択肢でしかないし、現在ではそれが実現出来るとも考えにくい。

最終的には結局、対面性能重視枠3、コンセプト遂行枠1、高耐久クッション1枠、崩し枠1のようなバランス型構築で、序盤慎重なプレイがマジョリティを制するような"見えざる手"によって環境が固まっていくものなのであろうか。